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対話型組織開発とは

 

そもそも組織開発(Organization Development)とは

 

「組織開発とは、組織の健全性と効果性と自己革新能力を高めるために、組織を理解し、発展させていく、計画的で協働的なプロセスである」 Warrick, 2005


組織開発は、「組織の健全性と効果性を高める」ために、戦略や制度といった組織のハードな側面だけではなく、人や関係性といったソフトな面に働きかけ、組織を変革していくアプローチです。

変革管理(Change Management)が経済的利益を目的として組織を管理監督することに対し、組織開発は社会的・集団的利益を目的に人やチームの開発(発達)を促進することになります。収益を目的とするのか、人の幸せを目的にするのかに違いがあると言えると思います。

組織開発が過去になした大きな役割として、組織を「機械的システム」のように見る考え方から、「生態システム」のように見る考え方に変化させたことでした。これにより、客観的に分析し問題のあるところや人は機械のように取り替えるのではなく、客観的に分析しつつも組織の一人一人が成長し協力できる関係が生まれることで、問題解決や目標達成に向かうことの有効性が証明されました。


対話型組織開発とは(Dialogic Organization Development)


対話型組織開発はその考え方をさらに発展させ、組織を「意義創造システム」(meaning making system)(*1)と見ています。

組織で起こることは、外部要因よりも、組織の人々がどのように相互作用しどのように意義を見出しているか、によって大きな影響を受けている(*2)からです。そのため、客観的分析よりも、共に働く人たちがどう感じどう考えるか対話し、その対話から紡ぎ出される未来の可能性を開く「生成的イメージ」に重きを置いています。

対話型組織開発の実践によって紡ぎ出された新しい選択肢は、組織の人々にエネルギーと説得力を与え、実行されていきます。多様性、複雑性、不確実性、混沌を包含しつつ、組織の人たち自らの力で意義や未来を見出し実現していきます。



対話型組織開発はただ対話することではない


 対話型組織開発は名前がよろしくないのか、「ワールドカフェやAIなどの対話の手法を使うことだ」とよく間違われます。
そもそも、対話のない組織開発はありえません。
 


実際、対話型組織開発で紹介されている手法をただ使っても50%以上が失敗しているとの研究結果があります。この原因には、対話型組織開発の考え方が共有されてないこと、また対話イベントの開催が目的とされ、大きな目的のもとにちゃんとした地図が作られてないためとされています。
 
イベントが開催されて「話せて良かったね。いい時間だったね。」という感想が出ても、その後の人々の会話や行動や関係や行動が変わらないのです。


そのため、大事なのは対話の手法ではなく、対話型組織開発の考え方と、対話のイベントの前後のプロセスも含まれた全体の戦略的デザインになります。




【ポイント1】対話型組織開発の考え方とは

 

対話型組織開発は「ヒューマンシステムは多くの場合、技術的解決策がない」と認めています。

いつでもどの組織でも通用する効果的な解決策はなく、現実の組織は実際にその場にいる人々の相互作用によって影響を受け、形作られているため、効果的な取り組みは組織ごとタイミングごとに違うのです。

 

ヒューマンシステムとは、人間の感覚、認知やヒューマンマシンインタフェースから、人間の学習、記憶、組織内行動、社会行動、理念、倫理、哲学、そして教育システムや広報システムまで、すなわち、人間の一部としてのシステムや、人間と接するシステムから、人間個人ないし人間集団を含むシステムまで、人間に関わるあらゆるシステムを意味します。つまり、私たちは、人間の一部である小さな感覚システムから、地球環境や人類という空間スケール・時間スケールの大きいシステムまで、なんらかの形で人間と関わるあらゆるシステムをヒューマンシステムととらえています。

 
そのため、変化を促進するために必要なことは、
 

  1. 会話の質を変化させる(*3)
    変化は日々の会話がどの程度変わったかによって促進されます。いつもと同じ様な会話の内容や会話の質では、同質化は強化されても変化は促進されません。
    変化が促進される会話では、時に対立や葛藤も起こりえます。
  2. 共通項を探す前に、参加を促す問いかけを用い、違いを言葉にしていく(*4)
    多様性を最大化し、誰かを特別扱いすることなく様々な見方や動機を表面化させる中で、収束が起きてきます。

 
会話の質を変え、折衷案や妥協案ではなく、違いが最大化し表面化する混沌の中から、大切な答えが創出されます。
この意味では、言葉はとても重要な要素(*5)です。
組織の変化は、組織の中で持つ言葉の意味や組織の物語の変化により生れ、また継続されます。
 

【ポイント2:対話のイベント前後のプロセスが含まれた全体の戦略的デザイン】


もう一つ、対話型組織開発で大事なポイントは、対話のイベントの前後のプロセスが含まれた全体のデザインになります。

対話型組織開発では、大事なスキルを3つあげています。
 

  1. 変革のための全体のプロセスデザイン
  2. イベントのプログラムデザイン
  3. その場のファシリテーション
 

1、2はきっちりしたTo doプランではなく、対話の話される内容の幅を広げ、参加者の思考や感情の揺れを促すプランです。地図というよりも、器のイメージが近いと思います。
3は、進行のファシリテーションと状況に応じたファシリテーションになります。
後者は組織開発を知っている皆さんでしたら、エドガー・シャインのORJIモデルが一番イメージしやすいでしょうか?
その場その場を丁寧に観察し感じ取り、状況に応じて働きかけるスキルとなります。

3のスキルは簡単に身につきませんが、1、2のスキルは基礎的なことを知っておくとみなさんの活動をより楽に進めてくれます。
 
対話の場をすでに参加されたり、立ち上げた方の中には、このような感想を持った方もいらっしゃるのではないでしょうか?
「もちろん対話の重要性は知っているし、その効果は知っている。」
「組織の中でチームの中で、すでに対話の場を持っている。」
「楽しいし、盛り上がるしまた話してみたいと感じている。」
「でも、対話されたことが活かされない、実践されない。なぜだろう?」
私自身も様々な対話の場づくりをする中で、このような疑問を持ちました。
ワールドカフェの使い方も、OSTの使い方もわかった、でもそれがいま一つ成長や変化へ繋がらないのです。
対話の問いを考えに考えたり、その場で様々な働きかけを試したりしましたが、どうも何かが違うことに気がつきました。
もちろん、これらは大切な要素になりますが、これだけでは、その後の行動につながるだけの自分ごとになる要素としては少し足りませんでした。

試行錯誤する中で考えついたのは、イベント前に、
 

  1. 準備チームの立ち上げから参加者を募ること(手上げ式)
  2. 丁寧な準備をすること、
  3. 思考や感情を呼び起こす呼びかけをすること、

 

でした。


また、イベントの後のプロセスとしては、
 
  • 対話の後の行動を後押しするような記録を残すこと(アクションプラン+α)
  • イベントとその後のアクションを丁寧に振り返ること
です。

これをしっかり考えて全体のデザインをすることで、対話の質もその後のアクションもぜんぜん違ったものになりました。
 
続く
 
2016年8月(2018年7月変更)
 

 
 
 

参考:
「組織開発入門」2014 中村和彦
(*1-8)対話型組織開発の8つのマインドセット「対話型組織開発」 
ヒューマンシステム:慶応大学 ヒューマンシステムデザイン研究室ウェブページ
 
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